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[標本番号:No.1215   採集日:2017/12/09   採集地:栃木県、真岡市]
[和名:カラフトツヤゴケ   学名:Entodon scabridens]
 
2018年1月30日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
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(l)
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(m)
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(n)
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(o)
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(p)
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(q)
(q)
(r)
(r)
(a) 樹幹に着生、(b) 植物体、(c) 標本:やや乾燥、(d) 標本:乾燥、(e) 標本:湿時、(f) 標本:湿時、(g) 標本:乾燥時と湿時、(h) 枝と枝葉、(i) 枝葉、(j) 枝葉、(k) 枝葉の先端、(l) 枝葉の基部、(m, n) 枝葉の葉身細胞、(o) 枝葉の翼部の細胞、(p, q) 枝葉の断面、(r) 枝の断面

 真岡市の井頭公園で昨年採取したツヤゴケ属 Entodon と思われる蘚類をようやく観察した。この時点で既に茎はボロボロになっていて、採集品には観察できるような茎葉はほとんど残っていなかった。また朔をつけたものは一つもなかった。一ヶ月以上室内に放置しておいたのですっかり乾いて全体が茶色になっていたが、水没させるとかなり黄緑色が戻ってきた。写真は採取時に撮影したものと、今日撮影したものが混じっている。

 公園のグラウンド脇の太い樹の幹に厚いマットを作って広がっていた(a)。近づいてよく見ると明るい黄緑色でツヤがあった(b)。茎は樹幹をはい、やや太めの枝が斜上して密にでている。枝はやや羽状に分枝し、扁平にではなく丸く葉をつけ、乾燥時に枝を含めて幅1〜1.3mm、湿時に幅1.8〜2.2mm。枝葉は卵形でやや深く凹み、先端は急に細く尖り、長さ1.2〜1.5mm、葉縁はほとんど全縁だが、先端の細くなるあたりにわずかに微歯の見られる葉もある。中肋はあいまいでほとんど見られなものから、わずかに弱く二叉する短いものがある。
 葉身細胞は線形で、長さ50〜90μm、幅4〜8μm、やや薄膜で平滑。葉の先端部の細胞はやや短かく、翼部には方形の細胞が5〜7列ほど並び長く連なる。翼部の細胞は長さ10〜20μm、幅10〜12μm。葉の断面で中肋の付近は一層で、明瞭には分化していない。茎や枝の断面で弱い中心束があり、表皮細胞は小さめでやや厚壁。

 茎に毛葉がなく、葉縁はほぼ全縁で、中肋が二叉して弱く、葉身細胞が線形で平滑、葉の翼部の細胞が明瞭に分化し方形で、葉先が細く尖ることなどから、ツヤゴケ属には間違いなさそうだ。保育社図鑑でも平凡社図鑑でも、この仲の検索は朔柄の形質状態で別れ、さらにその中で苞葉の状態で分けているので、そのままでは検索を使うことができなかった。
 そこでやむを得ず、両者に掲載されているツヤゴケ属を頭からすべて順にあたってみて、発生環境や基礎的な形質状態から「〜ではない」方式で残ったものを、改めてNoguchiのPart5にあたってみた。その結果、枝葉が全体に小さめだが、カラフトツヤゴケ E. scabridens がかなりの程度合致するように思えた。そこで、信頼性はやや低いがカラフトツヤゴケと同定した。