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日( )
2010年9月4日()
 
たまには子嚢菌
 
 先週富士山で、コケの間から柄の長いキンチャワンタケが多数でていた(a, b, c)。タッパウエアに容れ冷蔵庫に保管しておいた。連日の猛暑にも関わらず、蒸れて傷むこともなく昨日まで形を保っていた。紙袋ではなく密閉容器を使ったのがよかったのかもしれない。
 あらためて胞子紋を取ってみると結構落ちた。表面模様がきれいな胞子だ(d, e, f)。対物40倍レンズでも、表面模様はよく分かる(g)。子嚢は非アミロイド(j)。胞子の姿を見ていると、子実体のサイズも形も異質のオオシトネタケの胞子(k, l)を思い出してしまった(雑記2010.5.5)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 今朝これから出発して、Y. A. は富士山を歩き山中湖泊まり。三重県勢、関東勢と一緒にきのこ観察と懇親。一方、I. A. は千葉県清澄の東大演習林で地衣類の勉強、夜は清澄の宿舎泊まり。それぞれ別行動。富士山は涼しいだろう。清澄では猛暑とヒルに悩まされそうだ。

2010年9月3日(金)
 
フウセンタケはわからない
 
 富士山のコケの中からはいろいろな種類のフウセンタケ属のきのこがでる。先日の富士山でコケを採集した時に、そこに出ていたフウセンタケの仲間を持ち帰っていた(a, b)。この仲間は未知種、未記載種がやたら多くて、図鑑類をいくら見たところで種名にまでたどり着けることは希なので、種名への探索はせずに専ら観察して楽しむだけにしている。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 フウセンタケ属のきのこは一般に、日持ちがよく虫も少ない。この点イグチ類とは対照的だ。冷蔵庫に野菜と一緒に放り込んで既に10日ほど経つが、やや乾燥してはいるものの、ほとんど崩れていない(c)。胞子が結構丸みを帯びている(d)。ヒダを切り出して水で封入(e)した後、KOHで置き換えると濃黄色の色素がしみ出した(f)。縁シスチジア(g, i)も側シスチジア(h, j)もある。いい加減に処理したせいか、カサ表皮の様子はよくわからない(l)。

 スライドグラスにはいつの間にか多数の傷がついている。実体鏡の下でカミソリをあてるので、線状の傷が圧倒的に多い。ヒダ断面を封入したプレパラートでもよく分かる(e, f)。ここまで傷がひどいと洗うだけ無駄だ。今朝は久しぶりにスライドグラスを1枚処分した(雑記2010.8.29)。


2010年9月2日(木)
 
虫とのバトル
 
 先週富士山のお中道近くで、日射の強い溶岩帯の窪みにアミハナイグチが出ていた(a, b)。周辺には小さな灌木が若干あるが、樹林帯からは50m以上離れている。まるで誰かがいたずらをして溶岩の間にきのこを埋め込んだかのような印象だった。樹林帯には多数でていた(c)。
 溶岩帯のきのこと、樹林帯のコケの間から出ていたきのこを計5〜6個持ち帰った。カバーグラスに胞子紋をとって、その後冷蔵庫に入れたまま放置してあった。今朝袋を開いてみると、内側面には到る処にウジ虫が這い回っていた。きのこは崩れ始めてヒダの間には多数のウジ虫が蠢いていた。比較的ましなものを2つだけ残して他は捨てた(d, e)。胞子紋にはたっぷり胞子が落ちていたが(f)、ちょっと触れただけでもきのこは簡単に崩れてしまう。腐敗臭もすさまじい。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 管孔部の縁を少し切り取って縁をみるとシスチジアが見えたが、コントラストが弱いので、フロキシンで染めた(g)。管孔部の一小片をピスに挟んで横断面を切り出した(雑記2010.9.1)。多数の虫を一緒に切ってしまった。一つずつ取り除いたが、管孔部実質はすっかり崩れている(h, i)。
 次いでヒダの一部をつまみ出した。最初の仕事は虫を取り除くことだった。その後に組織をフロキシンで染めKOHで封入してから押しつぶした。シスチジアは縁にも側にもあり、大きさはまちまちだった。いつの間にやら、テーブル上には到る処にウジ虫が這い回っていた。

2010年9月1日(水)
 
イグチ切り出しの工夫
 
 ヒダをもったきのこのシスチジアやヒダ実質を確認するのは簡単だ。縁シスチジアの有無であれば、ヒダを一枚スライドグラスに寝かせて、縁をみればよい。狭い幅に縁を切り出してみてもよい。側シスチジアの有無と形を確認するのであれば、ヒダの中程から数ミリ四方の小片を切り出して押しつぶせばよい(雑記2009.4.1)。また、子実層托実質を確認するにはヒダの横断面を切り出せばよい。これには実体鏡を使うなり、簡易ミクロトームなどを使えば楽だ。
 ところがイグチの場合はちょっと事情が異なる。側シスチジアの有無と形は、孔口部を避けて管孔部の中程からひとつまみの小片を取り出して押しつぶせば簡単にわかる。やっかいなのが縁シスチジアの有無と形の確認、管孔部実質の確認だろう。本当に孔口部の先端のシスチジアなのか否かを確認するのが意外と難しいようだ(同2010.7.21)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 そこで、先日富士山で採取したクリカワヤシャイグチ(a)を素材に、一つの方法を紹介してみた。ふだんやっているように、半乾燥にはせず、生のままの状態から切り出した。
  1. 管孔部から小ブロックを切り出す:管孔に垂直になるように (b)
  2. 切り出した小ブロックをピスに挟む:孔口部を含めて、管孔に平行に (c)
  3. 実体鏡の下でピスごと切り出す:下にスライドグラスを置いて (d)
  4. 簡易ミクロトームを使ってもよい:多分この方が楽 (e)
  5. 切り出した管孔部の断面をピスと一緒にスライドグラスに置く (f)
  6. 少し多めの封入液を用いてカバーグラスをかける:ピスを残したまま (g)
 管孔部はスライドグラスの重さ程度でも簡単に倒れてしまったり潰れやすい。そこで、あえてピスを両側に残して支柱の役目をさせている(g)。縁シスチジアを正確に確認するためにも、孔口部を含めて切り出すことが肝要だ。したがって、ピスに挟み込む段階で孔口部が外にはみ出さないようにする(c)。ここまでできたら、後は検鏡するのみだ。
 ピスを支柱として使い、脆くて弱い切片が潰れないようにする方法は、応用範囲が広い。過去にもヒメヒガサヒトヨタケ節のきのこ(同2005.6.24同2006.4.15同2009.6.5)などでやっている。
 イグチ類の美しいプレパラートはこのやり方では無理だろう。ただ、多少厚い切片であっても、こうすれば楽に管孔部実質や縁シスチジアの確認ができる。

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